SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights)とは、避妊や中絶を自由に選択できることだけを指すものではありません。差別や暴力、強制を受けることなく、自らの身体や妊娠・出産について自己決定できる権利全体を意味しています。これは1994年の国際人口開発会議で提唱され、現在はSDGsにも位置づけられています。日本では依然としてジェンダーギャップが大きく、特に男女間の賃金格差が深刻な課題とされています。
経済格差は家庭や社会での意思決定にも影響し、女性が避妊や妊娠について主体的に選択しにくい状況につながります。また、予定外の妊娠や出産が、女性の就労継続や経済的自立をさらに困難にするという悪循環もうまれます。避妊法についても、日本では女性自身が主体的に使用できる避妊法の普及率が低く、多くがコンドームに依存している状況があります。女性自身の意思による避妊選択が十分確保されているとは言い難い状況です。
日本では包括的性教育が十分とは言えず、性交、避妊、同意、暴力に関する教育機会が限定的です。学習指導要領において、性交・避妊については中学校で教えないといういわゆる歯止め規定があり、性交同意年齢に達するまでにしっかりと教育が行われていません。わが国で性交同意年齢を16歳に引き上げたということは、16歳未満を性的な搾取の対象にしてはいけないという明確なメッセージということで、大きな進展ではあります。子どもへの性暴力に対する日本における罰則は非常に甘く、アメリカでは最大終身刑であり、いわゆるパパ活の罰金は日本では1,000万円以下でありますが、アメリカは1.1億円、フランスは5.2億円です。加害者への抑止力も弱く、加害者をつくらないための性教育もできていません。
イギリス、フランスなどでは、性教育の開始年齢は早く、性、セクシュアリティを肯定しており、10代の避妊用のピルは健康センターやかかりつけ医などでは無料で提供されています。緊急避妊薬OTC化はゴールではなく、包括的性教育の充実、性暴力支援体制の強化、ジェンダー平等の推進など、多くの課題に取り組むための一つの入り口として捉える必要があります。

(日本産婦人科医会報 2026年6月号)
(吉村 やすのり)





