遺伝子を改変する技術であるゲノム編集を使って子を誕生させることを禁止する法律が成立しました。ゲノム編集は生物の遺伝子の狙った部位を改変することができます。2020年にノーベル賞に選ばれた画期的な技術で、生命科学の基礎研究だけでなく農作物や魚の品種改良にもすでに利用されています。
受精卵にゲノム編集をすると狙いとは違う改変が起こり、生まれた子が思いも寄らぬ病気になるリスクがあります。後戻りはできず、影響はその子孫に引き継がれることになります。徹底的に検証して十分な安全性が確認されるまで、ヒトに実施すべきではないと考えられます。新法は、ゲノム編集を使ったヒトの受精卵をヒトや動物の子宮に戻すことを罰則規定を設けて禁止しました。これまでは研究指針がある程度で、医療応用に関する規制はなかったのですが、国際的には中国の研究者が2018年にゲノム編集ベビーの誕生を報告したことを契機に規制強化が進んでいました。
重篤な遺伝性の病気や不妊の治療に役立つことを期待する声はあり、米国では受精卵のゲノム編集で遺伝病を防ごうとするスタートアップが登場しています。規制が緩い国でヒトでの研究が進むと思われます。受精卵のゲノム編集は、遺伝性疾患の根本的治療法として有用であり、安全性を始めとする研究の継続は必要と考えられます。受精卵のゲノム編集応用を認め、胚移植を禁止する今回の法案成立は現時点で評価できます。
(吉村 やすのり)







