昨年西アフリカで発生したエボラ出血熱の大流行は、世界に大きな衝撃を与えました。しかしながら、1月28日WHOは、西アフリカにおけるエボラ状況が終息期に移ったと報告しています。この間、日本では専門家不足などの弱点が顕在化し、先進的な対策をとってきたはずの米国でも、科学的な判断による対策と社会不安との間で混乱が生じています。ギニアなど流行3ヵ国で、直近1週間に報告された新規感染者が、約半年ぶりに100人を下回ったとされています。今回の流行で、最初の患者発見からおよそ1年、2万人以上が感染し、9千人近くが亡くなりました。このエボラとの闘いに、ようやく終わりがみえてきています。
国際社会は、この大流行にあたっては資金や物資だけではなく、人的な面でも多くの専門家を西アフリカに派遣してきました。しかし、わが国からの派遣はこれまでわずか13名と、派遣可能な専門家が少ないことが露呈される経緯となりました。わが国ではこうした感染症に対する医師の研修機会も少なく、医療現場が十分に追い付いていない状況があります。専門医を養成するための研修会を含め、いつ来るかわからない感染症の脅威に対し国として、専門家の育成が急務です。
(2015年2月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)