生まれつき卵子がない女性や若くして閉経になってしまった女性に対し、現在わが国では、無償で卵子の提供が実施されている。27の不妊治療施設でつくるJISART(日本生殖補助医療標準化機関)は、2008年独自に卵子提供に関する指針を策定し、現在5施設において卵子の提供による体外受精が実施されています。14年末までに23人が誕生しているが、ほとんどが姉妹からの卵子の提供である。
卵子の提供で子どもをもった両親に対して、出自を知る権利についてアンケ-ト調査がされています。子どもが卵子提供について生まれたことを知る権利があるかについては、半数以上がそう思うと答えています。また、卵子提供者の特定の情報を子どもに告知すべきであると考えるヒトは、3割以上に及んでいます。卵子提供による妊娠は、女性が自分で子どもを産むことになり、卵子提供による真実を告知しやすい状況にあります。一方、精子提供による妊娠においては、子どもをつくる時に父親は全く関与しておらず、真実告知が難しい状況があります。しかしながら、海外においてはこうした第三者を介する生殖補助医療で、子どもに出自を知る権利を認める国が多くなっております。わが国においても少しずつではありますが、真実告知に向けてクライアントの考えも変わりつつあります。
(2015年2月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)