ホワイトカラ-・エグゼンプション(WE)とは、一定の条件にあてはまるホワイトカラ-労働者を、労働時間規制の対象から外すことをいいます。労働時間の規制が適用されず、残業代もつかない新しい働き方である、WEが導入されることになります。残業という考え方がなくなり、法定労働時間より長く働いたり、深夜や休日に働いたりしても、割増賃金は支払われないことになります。政府は、高い専門知識があり、年収1075万円以上の人を想定した新制度をもうけるため、労働基準法の改正を目指しています。この制度は労働者の命と健康を脅かす危険な制度なのでしょうか。それとも日本の将来にとって必要な自由な働き方なのでしょうか。
現在の規制には長時間労働による健康障害という問題があり、強化すべきところがあります。一方、工場で働くようなブルカラ-を念頭につくられてきた規制がそぐわない労働者がいるという現実もあります。WEの考え方は、長時間労働という規制を強化した上で、規制にふさわしくない人は対象から外すというのが発想です。残業をし、割増賃金という形で報酬をもらうのではなく、よい成果を上げて基本給や賞与、さたに昇進という形の報酬が良いと考えている労働者にとっては、時間の制約は余計な規制になることもあります。WEにふさわしい労働者に適用される限り、長時間労働をするかどうかは本人の判断に委ねられます。WEは、自分の仕事の遂行に裁量があることが絶対条件で、働き方の自律性がポイントなのです。しかし一方で、日本で働く労働者の命と健康を脅かす危険なものであり、過労死を助長する過労死推進法であると主張するものもいます。
(2015年2月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)