医療保険制度改革関連法案が閣議決定されました。財政が厳しい国民保健を支援するため、2018年度に運営を市町村から都道府県に移すことが柱となります。その財源として、来年度から大企業の健康保険組合の負担が増えることになります。この結果、保険料率を引き上げる健保組合が続出し、現役会社員の手取り収入も減少することになります。この見直しは60年ぶりです。国民健康保険の都道府県への移管は、市町村単位で税金を繰り入れて、赤字を埋める財政運営が限界に来ているのをあるべき姿にするという点で評価できます。
現役会社員の負担増が先行する一方で、高齢者に対する優遇の見通しは、2017年度からと先になります。75歳以上の保険料は、所得に応じ最大7割まで軽減されていますが、毎年の予算借置で最大9割まで軽減幅を広げる特例まであります。しかも年に810億円の国費を投じて、月々の保険料を370円(9割軽減の場合)と格安に抑えています。今回の改革の対象から外れた高齢者優遇も、まだまだ多くみられます。こうした医療費支出のあり方そのものを見直さなければ、公的医療保険は制度を安定的に維持することはできません。今後は、高齢者に対しても、自己負担割合の増額や患者任せの受診や薬の処方の重複をなくすなど、医療費のムダにメスを入れなければならないと思われます。
(2015年3月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)