わが国の長時間労働は一向に減りません。2014年のデータを見ると残業時間は年173時間であり、前年より7時間、20年前より36時間増えており、1993年以来最長になっています。長時間労働の第1の理由は、終身雇用にあります。日本は、社員を定年まで雇うのが原則であり、売り上げが落ち、仕事が減っても、解雇されるケ-スは滅多にありません。米国では、受注が増えれば社員を増やし、受注が減れば社員を減らすのが普通です。しかし日本では、今いる社員の労働時間を増やしたり減らしたりして対応するのが一般的です。
わが国では、働く時間が長い人が評価される企業風土が残っています。長く働く人ほど、出世する傾向にもあります。欧州では、長く働く人は生産性が低いと考えられますが、日本ではプラスの評価になりやすい傾向にあります。政府も長時間労働を是正するための対策に乗り出しています。1つ目は働く時間や仕事の範囲を限った「限定正社員」の普及です。2つ目は休みの強制です。これまで有給休暇は、働く人が申し出る必要があり、職場への配慮で休みにくい状況にありました。有給を全員に取らせるよう企業側に義務付けることも大切です。
(2015年3月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)