多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞というリンパ球が異常増殖する血液中のがんの一種です。形質細胞は免疫グロブリンという抗体を産生する細胞ですが、骨髄腫になると異常な抗体(M蛋白)が産生され、正常な抗体が減少し、免疫力が低下します。50歳以上の中高齢者、特に男性に多く発症します。国内の患者数は約13,000人程度です。異常なタンパク質ができて、腎臓内で詰まり腎不全になったり、骨を溶かす破骨細胞が刺激されて骨がもろくなったりします。
多発性骨髄腫の治療ハ、65歳以下では「自家造血栓細胞移植」と呼ぶ方法を実施する症例がづ増えてきています。これは最初に正常な幹細胞を取り出しておき、抗がん剤で骨髄内の細胞を全て除去した後、幹細胞を体の中に戻して骨髄を再生する方法です。治療効果は高いとされていますが、骨髄が再生するまで感染症の危険があり、一定の体力が求められます。そのため65歳以上の患者は、薬物治療が主体となります。薬物治療も進歩し、近年はさまざまなタイプの薬が登場しています。薬50年前に胎児に重大な薬害をもたらしたサリドマイドも、多発性骨髄腫の治療に使われています。最近では治療成績も良くなり、10年を超える生存期間が得られることもあります。

(2015年4月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。