子どもを持ちたい社員を後押しする動きが、一部の企業で定着するようになってきています。一方で、不妊治療などについて上司や同僚に話せないまま、仕事との両立に苦しむケ-スも依然として多いのが現状です。不妊治療の通院などのための休暇を認める企業は、少しずつ増えています。しかし、一方で不妊治療を理由に会社を辞める人も多いことも事実です。仕事をしながら不妊治療の通院時間を作るのは大変なことです。
晩婚化や仕事優先で出産を先送りし、不妊治療に頼らざるを得ないという社会的な要因が背景にあります。不妊治療に悩む人を支援するNPO法人Fineが、約2200人を対象に実施した仕事と不妊治療についてのアンケ-ト調査でも、仕事と治療の両立の難しさを訴える人は、9割を超えています。治療をしていることを職場に話している人は、6割強にとどまり、会社に休暇などの支援制度がないと答えた人は、8割にのぼっています。企業の中で、子どもを持ちたいという願いを周囲が自然に認め、支援する意識を定着させることが大切です。
(2015年4月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)