妊娠中が出産後の女性に対する嫌がらせをマタニティ-ハラスメント(マタハラ)といいます。セクハラやパワハラとともに、職場の3大ハラスメントとも言われています。会社側が退職を迫ったり、契約更新を拒否したりして、女性が職を失ったりすることがあります。労働組合の中央組織・連合の調査では、妊娠経験のある働く女性のうち、4人に1人がマタハラにあっているといわれています。 男女雇用機会均等法は、妊娠などを理由にした解雇や契約打ち切り、降格などの不利益な取り扱いを禁じていますが、マタハラは後を絶たないのが現状です。厚生労働省が3月、マタハラの基準を厳しくしました。妊娠や出産、復職から1年以内は、降格や契約打ち切りなどは、原則違反とすると決めました。会社側が「妊娠と関係ない」と主張しても、言い逃れは許されないことになります。妊娠中に負担の少ない業務に移ったことをきっかけに雇用主が降格させたのは原則違反だと、昨秋最高裁が判決を出したことにより、大きく流れが変わりました。産婦人科にとって、職場での、そして社会でのマタハラは許されない行為です。一生懸命子どもを産み育てたいと思っている女性に対するリスペクトが大切です。少子化の危機を乗り切るためには、社会、男性、職場の意識改革が必要条件です。
(2015年4月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)