出生前診断シリーズ―Ⅳ

胎児の後頸部浮腫(nuchal  translucencyNT)とは

 NT肥厚が確認された児では、染色体異常や心形態異常の頻度が高いため、NT肥厚と胎児形態異常とには関連があるとされています。母体血清マーカーと同様に、産婦人科医にはNT検査の存在を積極的に妊婦に知らせる義務はありません。NTの計測は確定的検査ではないため、確定診断には羊水穿刺などの検査が必要となります。意図せずにNT肥厚が発見される場合があります。「NT検査を受けるかどうか」「NT異常が発見された場合の告知をどうするか」について十分な話し合いが持たれていない状況で、NT異常が発見される場合には、遺伝カウンセリングが可能な施設に紹介することも考慮しなければなりません。
 NT値と疾病の関連について考慮する場合、正しい条件下で計測されていることが重要となります。NTは妊娠11週~136日に測定します。画像内に胎児頭部と胸郭上部のみが描出される程度までに拡大した画像上での測定が推奨されます。胎児矢状断面で胎児頸部皮下貯留液最大幅を測定します。胎児が反屈位では実際よりNTが大きく、逆に屈位が強いと小さく評価されることに注意しなければなりません。
母体年齢が上昇するほど、またNT計測値が大きいほど、胎児染色体異常の確率が高くなります。また、染色体異常児は胎内死亡することも多いため、妊娠週数が進むにつれて染色体異常の確率は低下します。NT値が3mm,4mm,5mm,および6mm以上の場合、21トリソミー、18トリソミー、あるいは13トリソミーの確率は、当該患者の年齢別確率よりも約3倍、18倍、28倍、および36倍高くなります。しかしながら、NT3.5mmかつ染色体正常で出生した児は、90%強の無病生存が期待できることも説明しなければなりません。染色体異常の確定診断のためには羊水検査が必要と説明することが必要となります。

(吉村 やすのり)

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