出生前診断シリーズ―Ⅸ

遺伝カウンセリングとインフォ-ムドコンセントとの違い

 インフォ-ムドコンセントは説明と同意と訳されますが、この概念は個人の尊重と自己決定権が基盤になっています。医師は医療を提供するにあたり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならないとされています。インフォ-ムドコンセントにおいては、実施する医療についてのリスクとベネフィットを説明し、それについての同様を得ることになります。
一方、遺伝カウンセリングにおいては、クライアントが自律的にその後の方向性を決めることができるように支援することであり、インフォ-ムドコンセントとの違いは明らかです。しかしながら、クライエントが十分な情報を得た上であっても、リスクや状況への適応を促進するための遺伝カウンセリングは大変困難です。出生前診断を受けようとするクライエントは、胎児に異常があった場合に中絶を考えていることが多いためです。
出生前診断においては、遺伝カウンセリングとインフォ-ムドコンセントの区別が難しい場合が少なくありません。出生前診断の遺伝カウンセリングを行った後で、妊婦が羊水検査を希望したような場合には、その遺伝カウンセリングの中やそれに引き続いて、羊水検査のインフォ-ムドコンセントを取ることになります。羊水検査では、具体的な検査の手法や診断できることとできないこと、流産リスクなどを中心に説明することになります。

(吉村 やすのり)

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