米スタンフォ-ド大学と東京大学を兼務する中内啓光教授は、8月をメドに人間の臓器を持つブタを作る実験を米国で始めることにしています。ヒトのiPS細胞をブタの胎内で膵臓や肝臓まで育てる計画で、病気を起こした臓器の働きを補う再生医療への応用をめざしています。世界に先駆け、5~10年内の実用化を目標にしています。中内教授は、東大医学化学研究所でiPS細胞の応用に向けた研究を重ねてきていましたが、わが国ではヒトの臓器をもつ動物の作成が禁じられており、米国で研究することにしたそうです。 実験ではまず、遺伝子操作で膵臓を持たなくしたブタの受精卵を作ります。そのままでは膵臓のない子ブタができてしまいますが、途中でヒトのiPS細胞を入れ、別のブタの子宮に戻します。子ブタの体内には、人のiPS細胞から再生された膵臓ができることになります。臨床応用では膵臓全体ではなく、血糖値の調整に必要なインスリンを出す膵島のみの移植が現実的とされています。
(2015年6月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)