わが国の着床前診断
遺伝子診断が可能であれば、PGDが技術的には可能となりますが、すべての事例を対象としているわけではありません。生命の選別につながる可能性を危惧する考え方などから、各国での対応はその歴史的背景や宗教などの社会的事情などから一様でありません。わが国のPGDは限定的な適応に対し、倫理審査を経て承認する極めて慎重な対応をとっています。
日本産科婦人科学会がガイドラインを公開し、わが国では実質的にこのガイドラインに準拠して実施されています。本法は臨床研究として位置づけられ、対象疾患は重篤な遺伝性疾患に限られています。習慣流産の既往を有する均衡型転座保因者に対しても適応が認められましたが、実施に際しては、事例ごとの審査を経て認可された事例のみが対象となることが明記されています。 このようにわが国におけるPGDは、その適応と条件の基本となる重篤な遺伝性疾患に限られることになり、同じ疾患でも症例ごとに審査の上で承認されています。重篤な疾患の定義について、現在までの同学会の判断基準は、成人に至るまでに死亡したり、強い生活制限が強いられるなどの重篤性が認められる疾患としています。
(吉村 やすのり)