出生前診断シリーズ―XIV

着床前診断の遺伝カウンセリング

基本的な遺伝カウンセリングの目的は、クライエントがその意思を自己決定できるようにサポートすることにあります。遺伝学に関する正確な知識の下に、クライエントの苦悩に対して決断を誘導するのではなく、クライエントが自らの意思で判断できるように客観的な観点からのサポートが必要になります。このためには難解な遺伝学の概念について専門知識をわかりやすく説明し、理解を得ることが大切です。
 PGDのクライエントの家系内には罹患者が存在することが一般的であり、PGDの遺伝カウンセリングは大切です。その遺伝子解析結果をもとにPGDを行うことから、罹患者に疾患の原因遺伝子の変異について開示の協力を仰ぐ必要が生じます。この際にクライエントが日頃からどのように患者およびその家族とかかわってきたかによって、協力が得られるか否かが決定される場合があります。これが十分になされていないことで遺伝情報の開示を得られないことがあります。疾患の存在から逃避し、患者とのかかわりを避けるなど、理解が不十分であることが懸念される場合は、十分な理解に達するまで遺伝カウンセリングを継続すべきです。
 習慣流産に対するPGDのクライエントに関して、カップル双方の染色体検査を行う前にその意義と検査を行うことの利点と欠点をよく理解してもらった上で、実施すべきです。結果の開示についてもカップルのどちらかが、染色体構造異常を有していた場合には、そのどちらかに異常が発見されたかをあえて特定せずに、どちらか一方が異常を有していることのみを知らせることになります。双方がお互いの個人情報を共有することは必ずしも利益につながらない可能性があり、染色体異常の保因者が夫婦のどちらかであるかを特定することは必要ないからです。

(吉村 やすのり)

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