病気やケガで損なわれた臓器の機能を修復する再生医療は、次世代の治療法として世界的な開発競争の真っ直中にあります。特に期待されるのが、さまざまな細胞や組織に育つ幹細胞を活用する方法です。特許庁がまとめた幹細胞関連技術の特許出願技術動向調査報告書によると、筆頭著者が所属する研究機構の国籍別の論文発表件数は、米国が他を大きく引き離しての首位でした。受精卵から作る胚性幹細胞(ES細胞)で、研究をリ-ドしてきた点などが反映されていると思われます。
2位は中国、3位が日本で、以下ドイツ、英国が続きます。ただし、2004年~2009年までは、日本は2位でした。中国は論文発表件数を約2倍に増やし、横ばいだった日本を追い越してしまいました。京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて作り、ノ-ベル賞に輝いた、iPS細胞も幹細胞の一種です。しかし幹細胞全体でみると、日本も決して有意とはいえない状況になってきました。
(2015年7月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)