AIによる遺伝子変異の予測

ヒトなどの生物の遺伝情報は、細胞の中にあるDNAに記録されています。DNAは4種類の塩基と呼ぶ物質がペアになった塩基対が並んだものです。ヒトの場合、約30億の塩基対が並んでいます。塩基対の配列のうち、体の中で様々な働きをするたんぱく質の設計図になっている部分を遺伝子と呼びます。ヒトのDNAには約2万の遺伝子があります。遺伝子の塩基配列が変わる変異が起こると、たんぱく質の機能の変化などで病気の原因になります。
グーグル・ディープマインドは、ヒトの遺伝子の小さな変異が病気の原因になる可能性を予測するAIを開発しました。DNA配列が1文字だけ変わる7,100万の変異の影響を予測しています。変異の32%(2,280万)は病気の原因になる病原性、57%は病気の原因にならない良性の可能性が高いと判定し、残り11%の影響は不明です。
変異が実際にどの病気にどのような仕組みで関係するかは個別の研究が必要ですが、予測は変異と病気の未知の関係を探る手がかりになります。治療や診断の研究に役立つ可能性があります。データは研究者が利用できるようになっており、病気に関わる遺伝子を発見する手助けになると思われます。AIを駆使することにより、生物学研究方法が大きく変化するかもしれません。

(2023年9月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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