米スタンフォード大学の研究チームの発表によれば、AI(人工知能)を使って設計したウイルスによって、世界で初めて細菌を殺すことができたとしています。ウイルスは、DNAやRNAなどの遺伝情報(ゲノム)がたんぱく質の殻に入っている単純な構造で、たんぱく質の設計図でもあるゲノムを人工的に合成すれば、ウイルスを作り替えることができます。
チームは、大量のゲノム配列を学習させた言語モデルであるEvo(エボ)を使い、ウイルスのゲノム配列を設計して合成しました。細菌に感染して増殖するウイルスであるバクテリオファージとして作った約300種類のうち、16種類で大腸菌に感染する機能を確認できました。これらは大腸菌の複製を止めることに成功しました。大腸菌は複製できなくなれば死滅することになります。
ウイルスは体内に入れて狙った細菌を殺す治療にも使えます。AIで設計できたことは、画期的な成果であり、新たなバイオテクノロジーや治療法の実現を可能にします。しかし、AIによるウイルスの作製は、バイオテロなどの脅威につながることも懸念されます。

(2025年10月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)