日本プルーフポイントの調査によれば、ロシアがウクライナに侵攻する直前の2021年後半以降、新手のメール攻撃が世界的に増加しています。昨秋頃までは月に1億~2億通ほどでしたが、ここ数カ月で急増し、今年1月は4億5千万通を超えています。ChatGPTのような生成AIの進化が要因の一つです。
ChatGPTが登場した2022年と翌2023年、なりすましで金を騙し取ろうとするようなビジネス詐欺メールを受け取った企業の割合を国別に比較しています。その結果、日本は35%増で、韓国の31%、UAEの28%とともに急増しています。いずれもアルファベットではない文字を持つ国で、同時期に減った欧米の主要国とは対照的です。今年1月に限ると大規模メール攻撃の7割が、個人を含む日本を標的にしています。
これまで言語の壁で守られてきた日本は、世界で最もメール攻撃にさらされる国になっています。AIが改ざんされたことを開発者や利用者が気づかないまま、致命的な判断ミスにつながる可能性があります。日本政府は、企業のAI開発などを重視し、新法によるAI規制に慎重でしたが、先行する欧米の規制に足並みをそろえようと、今国会での法案提出を目指す考えに転じています。
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(2025年2月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)