ASEANとの関係再構築の必要性

 国際通貨基金(IMF)の最新の世界経済見通しによれば、ASEAN 加盟10カ国合計の名目GDPは、2027年にも日本を上回ります。経済規模が大きいインドネシアやフィリピン、ベトナムなどの成長が寄与しています。失われた30年と呼ばれる経済停滞から抜け出せず、人口も減少する日本からすれば、地理的に近いうえ、市場の拡大と成長が続くASEANの戦略的価値は高くなっています。ASEANが経済と安全保障を軸に日本の利用価値を見定める時代に入り、関係の再構築が急務です。

 日本のASEANでの経済的影響力は薄れています。ASEANの今の最大の貿易相手国は、日本に取って代わった中国です。2023年の貿易総額は、中国が約3倍の差をつけています。ASEANにとって、日本はもはや協力相手国の選択肢の一つに過ぎない状況にあります。日本とASEANは、2023年12月に友好協力50年の節目に共創の関係を打ち出しています。経済規模の逆転を前に、対等な立場で互いの足らざる分野を補完することが大切になります。

 東南アジアは、南シナ海問題やサプライチェーンの再構築を巡る米中対立の舞台として重要性が増しています。日本は、バランサーとして挽回の好機と捉えるべきです。

(2025年1月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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