AYA(Adolescent and Young Adult)世代と呼ばれる15~39歳の若いがん患者に対する行政や企業の支援が広がり始めています。進学、就職、結婚、出産など人生で重要なイベントを迎える時期だけに、治療と両立できるようにする支援策が必要となります。国立がん研究センターによれば、この世代のがん発症者は年間に約2万人と推計されています。成長・発達段階でがんを発症すると身体的な負担だけでなく、進学、就職、結婚といった人生で重要なイベントと治療を両立することが難しくなります。
入院中の小中学生は、病院内にある特別支援学校の分教室で授業を受けられます。経済的な蓄えが少ないことも多い若年成人にとっては、治療と仕事を両立できるよう社内制度を工夫する企業は増えてきています。
AYA世代の治療では、放射線治療や薬物投与などが生殖機能に影響し、妊娠しにくくなるリスクへの対応が必要になります。広島県や岐阜県などは将来を見据えて治療前に卵子や精子、受精卵を凍結保存する妊孕性温存の費用を助成する制度を設けています。診断から治療までの限られた時間の中で、患者にとって妊娠・出産に関わる意思決定は容易ではありません。がん専門医は治療を最優先するため、リスクの説明が不十分なまま治療を始め、患者が妊娠を希望するようになって初めて生殖機能の低下を知ることもしばしばみられます。妊孕性温存をするのかどうかを患者が納得して決められるように、がん専門医と生殖医療専門医との密接な連携が必要となります。
(2019年4月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)