AYAとは、思春期・若年成人を意味するAdolescent and Young Adultの略です。15~39歳が該当します。厚生労働省によれば、2016年にがんと診断されたこの世代の患者は、2万2,448人にも達します。進学や就労、結婚、出産など、人生の節目となる出来事と治療の時期が重なるため、社会的な支援が必要とされます。国は、2018年の第3期がん対策推進基本計画において、AYA世代のがん対策を初めて盛り込みました。妊娠する可能性を残すことについて、医師らが治療前に情報提供をする体制をつくることになりました。
治療の影響で妊娠が難しくなる場合、精子や卵子を事前に凍結保存する選択肢があります。凍結保存の費用は、精子では2万円、受精卵、卵子、卵巣では20万~60万円必要となりますが、公的な医療保険は使えません。しかも、凍結保存をすれば将来必ず妊娠できるわけではありません。公的な助成制度を設ける都道府県もあります。厚生労働省研究班の調査によりますと、埼玉など6府県が導入済みで、静岡など8県が導入予定としています。国の助成を求める声もあります。
情報提供のあり方にも課題が残ります。ピンクリングが、2017年にがん患者493人に行った調査によれば、不妊のリスクや妊娠の可能性を残すことについて、治療前に医療者と話す機会がなかった人は41%にも上っています。命にかかわるがんの治療が最優先されるべきですが、子どもがほしいという患者の希望が、費用や情報不足が理由で失われることがあってはなりません。
(2019年7月24日 読売新聞)
(吉村 やすのり)