ノーベル賞受賞までの年数

 科学の大きな発見があってからノーベル賞が授与されるまでの期間は、長い年月を要します。2016年版の科学技術白書は、1940年代以降に科学分野のノーベル賞を受賞した447人について、受賞理由となった科学の発見から受賞まで何年かかったか調査しています。40年代は平均18.5年でしたが、その後伸び続け、2010年代には29.2年に達しています。受賞が遅くなっているのには、時代が進むにつれて研究開発の幅が広がり、ノーベル賞に値する研究者が増えたことが上げられます。日本は21世紀に入ってから15人の受賞者を輩出しています。大半は数十年前の成果です。
 イギリスのエドワーズ博士は、1978年にヒト体外受精を成功させました。それ以前に20年余りの研究期間がありました。それ以来、現在までに世界で500万人以上の子どもが誕生しています。しかし、2010年になるまでノーベル賞は与えられませんでした。研究を始めてから受賞するまで、50年かかったことになります。これにはローマカソリックの激しい反発があったと思われます。それに比較し、山中教授のiPS細胞の発見は、何ら臨床的な有用性が検証される前にノーベル賞が与えられました。現在、いろいろ研究はされていますが、今後臨床応用されるか否かについては未知数です。もう少し受賞は待ってからでも良かったのではないでしょうか。

(2016年6月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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