卵子の老化―続報― 女性の年齢と妊孕力との関係

加齢とともに妊娠できる能力は低下する。この妊娠する生物学的能力を妊孕(にんよう)性とか妊孕力と呼ぶ。妊孕力のある状態はFecund、妊孕性はFecundability(F)と表記される。女性の妊孕力(F)は、20才~30才では平均0.23であり、一般的に45歳前後で妊孕性はなくなり不妊状態(0)に近づく。45歳で不妊となるような女性においては、32歳前後より妊孕力は低下すると考えられている。(図1)。

(図1)

女性の年齢と妊孕力との関係を図2に示す。22歳時の妊孕力を1.0とすると、30歳では0.6を切り、40歳では0.3前後となる。これらの結果は、自然妊娠にもとづくデータであるが、この妊孕力は、体外受精・胚移植などの生殖補助医療を受けることを考慮に入れても、有意な上昇はみられないとされている。つまり、35歳以降の妊孕性低下にともなう出生数の減少は、生殖補助医療を用いてもカバーすることができないと考えられている。

この妊孕性の低下は、体外受精・胚移植を実施した際にも観察される。体外受精の成績は35歳以上で妊娠率の低下傾向がみられており、逆に40歳以上で流産率が上昇する。流産の60~70%は染色体異常によるものであり、卵子のクオリティーの低下、いわゆる卵子の老化に起因している。換言すれば、女性は35歳を越えると、卵巣における卵子の数の低下のみならず、個々の卵子のクオリティーも低下してくることになる。

(図2)


(吉村 やすのり)

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