わが国のコロナ対策の遅れ

国際通貨基金によれば、3月中旬までに主要7カ国が打ち出したコロナ対策の規模は、資金繰り支援の融資などを加えると、日本が国内総生産(GDP)の44.2%と最も大きくなっています。規模にこだわり巨費を投じた割には、現場への想像力が足りない対策は、実行力とスピードに欠けています。
迅速な実行を阻んだ要因は、デジタル化の遅れなどのインフラ基盤不足、行政組織間の連携不足、危機に備えた個人情報の管理のまずさなどがあげられます。一例を挙げれば、昨春の最初の宣言時に決まった国民1人一律10万円の給付金でも、マイナンバーを使ったオンライン申請が大混乱し、デジタル化の遅れや実務を担った自治体と政府の連携不足といった課題が浮き彫りになりました。
マイナンバーの活用も行政手続きのIT化も、歴代政権が訴え続けてきました。かけ声倒れだったことがコロナ禍で露わになりました。マイナンバーカードを始めとする国民一人一人の情報を国が持つことも、危機的状況を乗り切る際には必要と思われます。デジタル技術のインフラ基盤が整っていない状況で、支援の遅れを非難したところで解決になるとは思えません。約1年半に及ぶコロナ危機は、日本の経済政策や産業界が抱える様々な課題を顕在化させています。

(2021年7月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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