わが国の創薬研究の遅れ―Ⅲ

バイオ創薬の需要
バイオ創薬とは、細胞や遺伝子を改変し、医薬品を造る技術を言います。がんや病気の原因になる分子を狙い撃ちにする抗体医薬などの治療薬を造ることができます。2000年代にヒトの全遺伝情報が解読され、その後に一人ひとりの遺伝情報を高速で読み取る機器が普及すると、バイオ創薬が盛んになりました。英調査会社のエバリュエートによれば、2026年のバイオ医薬品の世界の売上高は5,050億ドル(約57兆円)と、2020年に比べて78%増える見通しです。全医薬品に占める比率も35%と、2020年比で5ポイント高まります。
20世紀末まで主流だった低分子薬に比べて副作用が小さく、高い効果が期待できます。一方で生産コストが高く、新薬の開発にも多様な技術が必要になります。2014年に日本で登場した小野薬品工業の画期的ながん免疫薬オプジーボは、当初年間の費用が3,500万円に達し、高額との批判を浴びました。高価なバイオ医薬品の普及が進むなか、今後は医薬品の費用対効果を適正に算定し、高額な医薬品に対する国の保険給付を慎重に行うなどの工夫が必要になります。

(2021年12月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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