カスタマーハラスメントの増加

パーソル総合研究所の調査によれば、顧客折衝があるサービス職のうち、35.5%が過去にカスハラを受けた経験があると回答しています。3人に1人の割合で被害を受けており、カスハラは働き手の大きな負担になっています。被害内容をみると、暴言や脅迫的な発言や威嚇的・乱暴な態度が多くなっています。法律上はグレーな行為が多く、刑事事件として扱うのは難しいのが特徴です。
消費者は文句を言える場所が増え、企業は消費者の話を聞く機会が増えた結果、一定の割合で 罵詈雑言も入ってくるようになりました。スマートフォンなど情報機器の普及やSNSの利用拡大もあり、カスハラは今後、さらに増える可能性があります。
カスハラ被害者は、男女とも20~30歳代の若年層に偏っています。心理的なダメージを受け、1年以内にカスハラ被害があった層は、なかった層に比べ、転職意向は1.9倍、年間の離職率は平均で1.3倍になっています。人手不足が深刻になる中で、カスハラ対策は喫緊の課題であり、経営層が真剣に向き合うべき課題です。
カスハラの加害者の属性をみると、男性かつ40歳代以上の中高年層が多くなっています。男性の方が未婚率が高く、社会的に孤立する傾向があることが背景にあるとみられます。孤立化すると、周囲からの指摘がなくなり他人への共感が失われやすく、自分が正しい、自分たちの頃はこうではなかったという考えがエスカレートしがちで、これが行き過ぎたクレームにつながっている可能性があります。
地方自治体では、被害防止に向けた条例制定を目指す動きが相次いでいます。法制化されれば、企業のカスハラ防止対策もより求められることになります。経営者のカスハラに対する認識には温度差が大きく、努力義務規定でも法制化は必要だと思います。

 

(2024年7月24日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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