ギャンブル依存症の若年化に憶う

ギャンブル依存症当事者は、コロナ禍以降低年齢化が進み、20~30代が8割弱を占めるようになってきています。特に20代は、28%(2019年)から37%(2023年)に増えています。ギャンブルがオンライン化し、スマホがあれば、誰でもどこでも24時間賭けられる環境になったためと思われます。さらに無料動画サイトでの実況配信やアプリ業者の宣伝合戦なども激化し、若者とギャンブルの接点が増えています。オンラインカジノに関する相談は2019年には全体の4.3%でしたが、2023年には20.3%にまで増えています。
世界を見ても、日本ほどギャンブルに無防備な国はありません。賭博は刑法で禁じられていますが、全国どこにでもパチンコ店があり、地方公共団体などが開催する競馬や競艇、競輪などの広告には有名タレントが出演しています。非常に身近な存在です。若年で、かつ身近で日常的に接するなど、ギャンブルへの垣根が低ければ低いほど依存症になりやすくなります。
2018年には、ギャンブル等依存症対策基本法も施行されましたが、国や業界団体の規制や対策は十分とは言えません。欧米諸国だけでなく韓国でも、ギャンブルを認可するにあたって、売り上げの数%はギャンブル依存症対策費に充てる仕組みがあります。しかし、日本では、対策は基本的に事業者の自主性任せで、予算規模も認識や対策も圧倒的に遅れています。
そもそも依存症の末期症状ともいえる犯罪に至る前に、治療や支援につながっていれば被害は生まれにくくなります。カジノなどギャンブルによる経済効果ばかりが注目されますが、社会が負うリスクや悪影響についても向き合うべきです。依存症はけっして個人の話ではなく、社会が向き合うべき問題です。


 

(2024年5月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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