ホテル稼働率の回復の遅れ

国内ホテルの平均稼働率は、インバウンドの旅行需要などを背景にコロナ禍に入る直前は80%程度の水準にありました。コロナ禍で旅行者の行き来が無くなると低迷し、10%台に落ち込んだ月もありましたが、経済活動の再開に伴って上昇しました。新型コロナウイルス禍からの国内のホテル需要の回復が足踏みしています。ホテルの稼働率は2カ月連続で低下し、再び70%を下回りました。政府の観光需要喚起策が再開し、インバウンドも増加傾向にあるものの、中国人観光客の戻りの弱さが壁になっています。
一方、平均客室単価の下落は限定的です。1月の全国平均は1万5,342円と前月からは1,764円安くなっていますが、コロナ禍前の2019年1月比では14.6%高くなっています。全国旅行支援以外にも、物価上昇や訪日旅行者向けの為替差を考慮したプライシングなど、環境変化の影響が単価を押し上げています。
稼働率の回復が足踏みする底流にあるのが、コロナ禍前にインバウンドのおよそ3割を占めていた中国人の戻りの鈍さです。中国本土から観光目的の宿泊客が戻るまでには、まだまだ時間がかかります。中国からの観光客がどれほどのペースで戻るのかが、コロナ禍前に近い水準に回復する鍵となっています。

(2023年3月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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