人工衛星による光害

人工衛星は、地球を周回する人工天体で、最も多いのはインターネットサービスなどを担う通信衛星です。地球の状態を観測する地球観測衛星は、災害の状況を調べるのにも役立ちます。米国の全地球測位システム(GPS)をはじめとする測位衛星は、地上の位置情報を高精度に把握でき、カーナビやスマートフォンで浸透します。軌道の高さは目的によって異なります。高軌道だと広範囲をカバーしやすく、低軌道は地上との通信の遅れが少ないなどのメリットがあります。

現在、世界で運用中の衛星は約9千基あり、年々増えてきています。うち6割以上は、2020年以降に打ち上げた通信衛星です。気象衛星などより低い高度2千㎞以下の軌道で地球を覆うようにひしめき、地域の問わず高速のインターネット接続を可能にしています。近年は、技術の発展による低コスト化で商業衛星が急増しています。打ち上げ費用は、低軌道なら1㎏あたり約30万円と、1980年代の50分の1まで低下しています。新興企業の参入も相次いでいます。
人工衛星は太陽の光を反射します。地球の陰に入らない朝夕の薄明時に、特に明るく見えやすくなります。1基ごとならわずかな影響が、数が増えるにつれて無視できなくなってきています。日本を含む緯度30~40度の地域で、夏至や春分・秋分の朝夕に明るく見える星の約1割を占めるまでになってきています。天文学への影響を懸念する声も強まってきています。

 

(2024年1月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。