介護業界でM&Aが活発になっています。投資ファンドや異業種の大手企業が積極的に資金を投じ、中小の介護関連会社では同業者に事業を譲渡するケースが多くなっています。介護は高齢化によって市場の拡大が見込まれていますが、小規模の事業者が多く、総じて効率化が遅れています。
M&Aの多くを占めるのは中小事業者同士で、2015年頃から件数が増え始めました。社会保障費の抑制のため、2015年に介護報酬が全体で2.27%引き下げられ、収益をあげにくくなったことが一因とされています。介護業界は慢性的な人手不足が続いており、近年は物価の上昇も重荷になっています。中小事業者の倒産が増える一方で、利用者に迷惑はかけられないとして、追い込まれる前に事業譲渡を選ぶケースが多くなっています。
通所や訪問など複数の介護サービスを展開していた事業者が一つに絞ったり、主要な地域以外での事業を切り離したりするケースが目立つようになってきています。経営基盤を強くしようと、事業領域と地域との両面で、選択と集中の動きが起きています。
(2024年4月25日 読売新聞)
(吉村 やすのり)