配偶者の平均月収が2018年ごろから増え始め、世帯あたりでみた稼ぎはこの5年で約1割増えています。しかし手取りベースでは、約20年前の水準を回復していません。共働きで収入が上乗せされても、税や社会保障費の負担に打ち消され、回復の実感に乏しいのが現状です。
可処分所得とは、家計の収入のうち、政府への税金や社会保険料などの支払いを差し引いた、いわゆる手取りの部分です。食品やサービスへの消費などに自由に回せるお金です。収入には、労働の対価である賃金のほか、資産運用などによる収益を含められます。総務省によれば、2021年の2人以上の勤労者世帯の実収入は月60万円で、この2割に相当する所得税などの税金や社会保険料(計約11万円)を差し引いた約49万円が手取りとなります。
日本の家計の可処分所得は、全体として伸び悩んでいます。欧州委員会によれば、2000年と比べて2021年は横ばいにとどまっています。米国の約2.6倍や欧州の約1.6倍と比べて大きく見劣りします。収入が伸び悩んでいることと、社会保障負担が膨らんでいることによります。家計が苦しいと支出に影響が出ます。例えば消費支出に占める食費の割合であるエンゲル係数をみると、日本では2020年に26%と2000年以降で最高となっています。
自由に使える可処分所得が伸び悩めば消費は上向きにくく、経済の足を引っ張ります。OECDの景況感指数で、日本の家計は2019年以降中立水準の100を下回っています。直近の9月は、消費者と企業の指数の差が、1982年以降で最大に開いています。
(2022年12月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)