国立大学法人の研究現場は、国からの運営交付金の減少により、危機的な状況にあります。研究費は、国からの運営費交付金と競争的資金などの外部資金が主な収入源です。運営費交付金は減り続け、外部資金は使途が限られるなど、資金不足により独創性のある基礎研究を進めにくくなっています。私学においては、運営費交付金ではなく私学大学等経営費補助金が与えられますが、一校あたりの額は、国立大学の運営費交付金に比べると少ないことより、国立大学より研究を続けるのが厳しい状況にあります。
いずれにしても、大学が特色ある基礎研究を進めるには苦しい状況にあります。各大学はこうした落ち込みを補うため、外部資金の獲得に力を入れています。外部資金には企業との共同研究費や寄付金などがありますが、中核をなすのが競争的研究費です。しかし科研費の伸びもここ数年は頭打ちで、その資金を獲得できる研究者は大学にもよりますが、単純計算では3~4人に1人しかいないのが現状です。成果が確実に見込めない傾向が強まっており、萌芽的研究など挑戦的な研究が減ってきています。
2013年より日本版NIH、日本医療研究開発機構(AMED)が設立されました。これまでの公的な外部資金は、その大部分がAMEDによって審査されることになります。このAMEDにおける医療研究開発や創薬、医療機器の開発への期待が寄せられています。
(2015年9月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)