夫婦間の腎臓移植の拡大

公益社団法人日本臓器移植ネットワークによれば、2024年3月末時点で腎臓移植の希望者は1万4,350人に上っています。一方で臓器提供の意思登録は進まず、2023年度に脳死と心停止から移植されたのは計227件にとどまっています。待機期間は平均約15年に上っています。国のガイドラインは、生体移植についてやむを得ない場合に例外として実施されるものとしていますが、生体移植に頼らざるを得ない状況にあります。
夫婦間で臓器を移植する人が増えています。血のつながりのある親子間が主流でしたが、医療の進歩で夫婦間の移植が選ばれやすくなっています。一般社団法人日本移植学会によれば、2022年の腎移植は全国で計1,782件です。うち約9割を生体移植が占めています。2015年には配偶者からの提供が親子間を上回り、2022年は生体間の43%を夫婦間が占めています。
移植の際、白血球の型が合わないと体が臓器を異物と判断して拒絶反応を起こします。遺伝的に近い方が白血球の型が似るため、血縁関係のある親子間で移植が行われてきました。免疫抑制剤の性能が飛躍的に進歩したことで、親子間と同等に拒絶反応を抑えられるようになり、夫婦間の件数が増えています。
生体移植にはリスクも伴います。ドナーは腎機能が手術前の6~7割に下がり、疲れやすくなることがあります。ドナーに透析が必要になる確率が上がるとの研究報告もあります。移植した臓器が合わず拒絶反応が起こることもあります。夫婦に子どもがいた場合、腎臓移植が必要になっても親から子への移植はできなくなります。

(2024年8月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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