女性医師の働き方改革

全国医師ユニオンの大学病院の医師2割を含む勤務医を対象にした2022年の調査によれば、1カ月間休みがゼロが5.1%、時間外手当の支払いはないが12.8%など、いまだ過酷な労働実態が見受けられます。また日常的に死や自殺について考えると答えた医師が、20代では14.0%にものぼっています。長時間労働や休みの少なさ、パワハラが関連している可能性があります。
日本の勤務医モデルは、専業主婦を妻に持つ男性の医師モデルです。そうした昭和的なモデルは完全に破綻しています。昭和モデルのしわ寄せは、特に女性医師の働き方に影を落としています。女性医師の割合は、増える傾向にありますがまだ2割ほどで、OECD加盟国の中で最下位です。厚生労働省によれば、女性医師の就業率は38歳頃に76%まで下がってしまいます。
特に慢性的に長時間労働の大学病院は、宿直など不規則な働き方が求められます。20代後半~30代は研修のため各地の病院を短期間で異動することが多く、育休取得や保育所の確保が難しいため、離職につながりやすい状況にあります。
ジェンダー格差は、女性幹部の登用にも表れています。82大学病院のうち、女性院長はゼロです。日本医師会の2019年の調査によれば、回答した58大学の医学部教授のうち、女性は4.3%にとどまっています。85ある医学会でも、女性医師の会長や理事長は少なく、日本産科婦人科学会以外にはみられません。こうした多様性のない組織は、働き方改革の障壁になりかねません。

 

(2024年1月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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