女性教員の登用

海外の大学に比べ、日本の大学は教員への女性の起用が遅れています。2022年時点の東京大学の教員の女性比率は16%で、日本の国立大学の中でも低い水準にあります。国立大学協会の2021年の調査によれば、全国の国立大学86校のうち、お茶の水女子大学や東京外国語大学が4割を超える一方、東京大学は14.3%で72番目です。旧帝国大学では、京都大学の13.2%に次いで低くなっています。

欧米では女性教員を増やす取り組みが進んでいます。OECDの調査によれば、大学などの高等教育機関で働く教員に占める女性比率は平均45%で、リトアニアの59%、フィンランドの53%、米国の51%は半数を超えています。研究に重点を置く大学はさらに積極的です。ノーベル賞学者を多く出す米マサチューセッツ工科大学は、1990年代から女性教員の地位向上を図り、2004年に初の女性学長が誕生しています。

国内トップ大が採用増に踏み切る背景には、多様性の確保が進まなければ世界的に激しさを増す研究力の向上競争で後れを取るとの危機感があります。東京大学は、6年間で約300人の女性の教授・准教授の採用を掲げています。ただ学部生の約2割にとどまる女性の比率を高めて、研究者を目指す層を増やすことや、外部から優秀な女性教員を招けるかがカギとなります。ポスト新設や給与待遇の充実に加え、学内の保育所機能やハラスメントの防止体制の一段の強化も求められます。

(2022年11月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。