子どもの体験格差の拡大

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの小学生の保護者約2,100人に対する調査によれば、世帯年収300万円未満の子どもの29.9%に、直近1年間で学外での体験がありませんでした。未体験率は600万円以上の11.3%の2.6倍に上っています。ひとり親や共働き世帯は、習い事の送迎などが難しく、夏休みに子どもが自宅にこもりきりになる例もあります。
近年の研究では、スポーツや文化芸術など多様な活動に参加することが成長に良い影響を与える一方、体験の欠如が貧困の連鎖と深く関係していることが分かってきています。体験を重ねずに育つと、勉強や努力が将来どう役立つかを想像できず、意欲が高まらない場合があります。意欲の格差は学歴格差を生み、経済格差の固定化につながってしまいます。
日本国内では、体験の場も減少しています。文部科学省の社会教育調査によると、青年の家などの青少年教育施設は、2005年から2021年までに480カ所減っています。無償や安価で利用できる施設の減少は、格差の拡大につながる恐れがあります。体験格差解消に向け、支援団体などが体験を提供する活動に乗り出しています。

(2024年8月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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