国内の感染症の専門家などが、新型コロナウイルスは空気感染すると言い換えるように求めています。厚生労働省は、従来より接触感染や飛沫感染のほか、3密の環境などで漂う飛沫の微粒子によるエアロゾル感染などでうつるとしていました。新型コロナの感染経路については、空気感染が主とし、不織布マスクなどは対策に有効ですが、ウレタンマスクでは不十分と市民に周知すべきだと指摘する人もいます。
空気感染は、直径5㎛以下で乾燥した飛沫核が長い間空気中を漂い、遠くまで届いて感染します。感染力が強く、麻疹や水ぼうそうなどです。エアロゾル感染は、飛沫の大きさは空気感染と同程度ですが、特に乾燥しておらず、空気感染の飛沫核ほど遠くまで移動しないとみられています。3密環境などではある程度とどまるため、この飛沫を吸い込んで感染が起きます。マイクロ飛沫感染と表現されることもあります。
エアロゾル感染は、空気を介した感染で空気感染と表現すべきとする学者もいます。空気感染があると明確にしないと、飛沫感染や接触感染への対策が重視されすぎて、対策全体の実効性が高まらないと強調されています。空気感染としても取るべき対策は、透過しにくい不織布マスク着用や換気など基本的なことの徹底です。
広い意味の空気感染にエアロゾルによる感染を含むならば、新型コロナは空気感染すると言えます。しかし、麻疹などのように長距離でも感染するタイプの空気感染ではありません。
(2021年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)