日本のものづくりを支えた高専60年

5年間の濃密な理系教育を行う高等専門学校が、1962年に誕生して今年で60年になります。高度経済成長期の日本のものづくりの現場を支えるエンジニアを主に輩出してきた高専の卒業生の数は、50万人近くにもなります。高校、大学の7年間の授業を5年に濃密に凝縮した理科系の教育システムです。産業構造が大きく変わり、デジタル化が急速に進む今でも、その学びの輝きは変わらず、学究、実業、起業など活躍の場はさらに広がっています。
国立高専の場合、多くが寮生活を送り、人間性に富んだ青春時代を過ごします。そこに一人の学生としての主体性も育まれ、発想の柔軟性、豊かな創造力が発揮できる環境が醸成されます。すぐに手が動いて作る機動性は高専生のお家芸です。高専の使命は創造性のある実践的技術者の育成です。

 

高専は、その時代、時代に社会が求める優秀な人材を輩出してきました。高専が誕生した当時は、高度成長時代のものづくりの現場に求められるエンジニアでした。高専誕生から60年経ち、産業構造は大きく変わりました。エンジニアとしての根幹は変わりませんが、デジタル社会ではもの作りの手法も変わり、考え方も変わります。今後は本当に必要な性能などより世の中に役に立つことを意識したもの作りの教育が必要となります。サイエンスの基本から応用まで、世の中に役立つためにどうすれば良いのかが求められています。デザインや機能について、社会と繋がる力が必要となります。
世界では高専がKOSENと呼ばれています。アフリカやアジアから高専教育を導入したいという話はたくさんあるそうです。既にモンゴルとタイに高専があり、ベトナムには高専モデルの学校もあります。高専教育は、日本よりも海外で高く評価されています。

 

(2022年11月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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