日本の最低賃金の低迷

日本の最低賃金は、主要先進国の中では水準の低さが際立っています。2021年の最低賃金は、フランスと英国が1,302円、ドイツが1,206円、米国は州平均で1,060円です。上げ幅も鈍くなっています。日本は新型コロナウイルス下での企業業績の悪化もあり、2020年10月からの引き上げ幅は0.1%でした。英国は2020年4月に6.2%、2021年4月に2.2%引き上げ、ドイツも2020年1月に1.7%、2021年1月に1.6%上げています。
分配強化の観点から、最低賃金引き上げに取り組む国は多くなっています。賃金の低迷が続けば、消費意欲はなかなか高まりません。欧米で消費者物価が上昇する中で、日本は低迷が続いてデフレ脱却は遠く、悪循環に陥っている可能性があります。
最低賃金の引き下げは、財政支出なく格差是正対策ができます。世論の受けも良く、政治的に好まれます。しかし、支払う賃金と労働者が生み出す付加価値のバランスが適切でないと持続的ではなくなってしまいます。最低賃金引き上げは、中小企業にしわ寄せがいきかねず、政策面の配慮が必要となります。
相対的に低い日本の最低賃金は、付加価値や生産性の高くない仕事の残存につながります。コロナ下で、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性の向上に舵を切りつつあります。対応できる仕事は自動化し、より付加価値の高い作業にシフトする重要度は増しています。

 

(2021年7月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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