母乳バンクの利用の広がり

寄付された母乳であるドナーミルクを、早産の赤ちゃんに届ける母乳バンクの利用が広がっています。早産だと体調面などの問題から母がすぐに母乳を与えられないことも少なくありません。臓器が未発達のまま生まれた子にとって病気を防ぐ効果が高い母乳は貴重です。母乳バンクの国内の拠点は、子ども用メーカー、ピジョン本社内の日本橋母乳バンク、日本財団母乳バンク、藤田医科大病院の計3カ所です。自宅などで搾乳したドナーから受け取り、殺菌処理し保管します。
取り組みが本格化した2018年以降、利用は順調に拡大しています。今年5月時点で、利用医療機関数は40都道府県の103まで伸びています。昨年度は1,118人の赤ちゃんに届けられています。ドナーミルクは、人工乳に比べて壊死性腸炎のリスクを低下させる効果があります。未熟児網膜症や慢性肺疾患の罹患率や重症度低下も期待できます。
日本橋母乳バンクは、病院が支払う利用料、企業や個人からの寄付を基に活動していますが、赤字経営です。厚生労働省が支援拡充を検討していますが、ドナーミルクは食品か薬かの分類も定まっておらず、結論が出るまでには時間がかかります。ドナーミルクを必要とする赤ちゃんは、年に5千人程度との推計もあります。資金面などの課題が解消されれば、利用がさらに広がる余地があります。

(2024年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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