街路樹の減少

国土交通省の国土技術政策総合研究所が5年ごとにまとめるわが国の街路樹によれば、国内の街路樹の本数は、1987年の371万本から増加を続け、2002年には679万本のピークに達しました。その後も道路は延びている一方で、2022年には629万本まで減少しています。道路上の制限を超えて大きく成長してしまうことや交通への影響などが、伐採や撤去が進んだ要因とされています。根が道路の舗装を持ち上げる根上がりへの対策も必要になります。
街路樹は景観の向上に加えて、樹木の葉が夏の強い日差しを遮ってくれてヒートアイランド現象の緩和にも役立ちます。二酸化炭素とともに汚染物質を吸収する作用もあり、都市の大気を浄化してくれます。火事の延焼を防ぐなど防災としての効果もあります。さらに、人為的な植栽ではあるものの、鳥などの動物の住処となっているため、生物多様性の確保や、人と生き物が触れ合う機会づくりにも役立っています。
街路樹に悩まされる地域も少なくありません。街路樹の多くは落葉樹であるため、秋になると大量の落ち葉が生じます。ムクドリなど野鳥のねぐらになることもあり、騒音や糞害の原因にもなります。台風などで倒木や枝の落下といったリスクもあります。そんな街路樹は、この20年で約50万本も減っています。
地球温暖化対策としてのカーボンニュートラルの観点からも、道路緑化の推進は重要です。住宅地の緑被率が高かったり街路樹が多かったりすると、うつ病の発症率が低下する傾向があり、住む人の幸福度を高める効果も分かってきています。新規植栽の他に維持管理、樹種転換を含めた更新の重要性が高まっています。

(2023年11月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。