診療報酬改定を巡る綱引き

財政制度等審議会の財政制度分科会は、医療機関の収入になる診療報酬について、マイナス改定が適当と訴えています。保険料や患者負担などで診療報酬を賄っている点を踏まえ、プラス改定は勤め人の手取り所得の減少につながると指摘しています。
根拠とするのが診療所の好成績です。財務省が診療所のみを運営する全国の医療法人の経営実態を調査したところ、2022年度の経常利益率は、平均で8.8%で中小企業の平均3%強より高いことが分かっています。内部留保にあたる利益剰余金も、法人あたりの平均は2022年度で1億2,400万円でした。2020年度から1,900万円増えています。医療従事者へ3%を賃上げするために必要な費用の約14年分にあたるとし、診療報酬本体をマイナス改定しても賃上げできると指摘しています。
診療報酬は、主に医師、看護師らの人件費に回る本体と薬代の薬価に大別されます。2024年度は2年に1度の診療報酬の改定年度となり、年末に改定率が決まります。医療費の財源は25%程度が国費で、保険料が50%程度、10%超が患者負担です。診療報酬のプラス改定は、国費の歳出増や保険料の負担増を意味します。
診療報酬は、近年薬価を大幅に引き下げ、本体部分は微増にして全体の改定率をマイナスとするケースが多くなっています。その結果、国内市場が縮小し、特に中小の製薬会社は経営が厳しくなっています。薬不足が深刻化する中、大幅な薬価の引き下げは期待できないとの声もあります。

 

(2023年11月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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