コロナ禍で2020年に落ち込んだ消費支出は、2021年は2年ぶりにわずかに前年比プラスとなりました。しかし、回復は限定的で、2019年と比べると、実質4.6%減となり、コロナ前の水準には戻っていません。お金が使われなかったことで、貯蓄率は高水準のままです。所得に対してどれだけ貯蓄が増えたかをみる平均貯蓄率は、2019年の31.4%から2020年は35.2%に急伸しています。10万円の特別定額給付金と消費手控えが貯蓄率を押し上げた理由ですが、2021年は同様の給付金はなかったのに34.2%でした。
家計調査の消費支出の実質増減率をみると、コロナ前と比べて食事代は27.0%減、飲酒代は76.7%減、パック旅行費は82.3%減でした。外食などは前年割れが続いています。旅行業界も緊急事態宣言の発令などで需要が低迷しています。
日本の消費は米欧に比べ弱さが目立っています。OECDの見通しでは、2021年実質個人消費の増加率は、米国が8.0%増、英国が3.7%増と高い一方、日本は1.3%増とドイツに次いで低くなっています。米国などでは、コロナで抑えられていた消費がリベンジの形で再開しましたが、日本ではこの傾向はみられていません。
内閣府によれば、家計にはコロナ前のトレンドから比べて約40兆円の超過貯蓄があるとされています。消費に回る可能性のあったお金が使われない構図になっています。堅調な消費が景気をけん引する米国とは異なり、わが国ではコロナで我慢していた需要が盛り返すリベンジ消費は勢いがなく、成長軌道への道筋は見えにくくなっています。
(2022年2月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)