遺伝子治療の市場の拡大

遺伝子治療は、病気に関係する遺伝子の動きを、人工的につくった遺伝子を投与して補う手法です。遺伝子の異常が原因となる脊髄性筋萎縮症やがんの治療で効果が期待されています。これまで治療方法がなかった病気にも治療の道が開ける可能性があり、国内外の製薬会社が次世代技術として開発に乗り出しています。
アステラス製薬は、人の遺伝子を体内に投与し治療する遺伝子治療薬の実用化に向けた投資を積み増します。投与する遺伝子を増やし、治療を受ける人の体内に運ぶために、ウイルスベクターと呼ぶ成分が必要となります。このウイルスベクターを作る工場をノースカロライナ州に新設します。製薬会社以外でも成長市場を取り込もうとする動きが広がっています。
遺伝子治療の研究開発では、欧米企業が先行しています。日本の企業が経営戦略に沿って市場を開拓するには、競合に勝る事業のスピード感や品質が必要となります。先端技術として期待が高い一方で研究開発費がかさむほか、化学合成でつくる薬などと比べると生産コストも膨らむため、治療薬が高額になる課題もあります。

(2021年7月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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