金融教育の必要性

金融の知識や判断力を指す金融リテラシーは、米国のみならず英国やドイツ、フランスと比べても低くなっています。金融知識に自信がある人の割合は、米国が71%なのに対し、日本は12%に過ぎません。複利の計算問題の正答率では、日本は43%にとどまっています。米国は72%です。金融教育を学校などで受けた経験は日本が7%で、米国の20%に見劣りします。
英国では、カリキュラムは小学校に入学する前から組まれています。3歳から5歳ではポンドなどのお金の単位や価格、お店での支払い、銀行での貯金といった内容を学びます。5歳から7歳になると、銀行でのお金の使い方のほか、ニーズやウォンツといった心情についても教えています。9~11歳はクレジットカードなど、日本では中学校で学ぶ内容が含まれ、さらに、経費、控除、損失、リスク、リターンなど日本の高校でも専門科目で学ぶ内容を取り扱っています。貧困やギャンブルの問題についても触れています。ファイナンシャル・ウェルビーイングと呼ぶ将来のお金に心配のない状態を作り出すことができるように、個人 の金融リテラシーを高めることを国の目標にしています。
日本は、学習指導要領を改訂し、中学生向けに2021年度から、高校生向けに2022年度から金融教育をスタートしています。教える教員側も人員不足で、投資は危ないといった紋切り型のイメージを持つ教員も少なくありません。社会人になっても金融を学ぶ機会はあまりありません。日本の金融教育の取り組みは緒に就いたばかりです。国全体として、中立的な立場から、金融経済教育の機会提供に向けた取り組みを推進するための体制をし始めました。

(2022年11月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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