窓口など最前線で対応する地方公務員の多くは非正規で、4分の3を女性が占めています。2020年4月に、非正規公務員の処遇改善を目的に会計年度任用職員制度が導入されました。
非正規公務員とは、パートタイムや有期契約の職員を指します。従来、特別職非常勤職員、臨時的任用職員、一般職非常勤職員の3つに分かれ、自治体によって運用がバラバラでした。このため非正規の法的地位を明確にし、ボーナスや退職金の支給など処遇改善を目的に導入されたのが、会計年度任用職員制度です。全国に約69万人いる非正規公務員の9割にあたる約62万人が、2020年4月から会計年度任用職員に一本化されました。そのうち女性が8割弱を占めています。
導入から約1年半が過ぎた今も、処遇改善にはほど遠いのが実情です。昨年の年収が200万円未満の人が半数超を占め、全体の77%は、年収が250万円に満たないのが現状です。制度改正前よりも給料水準が下がった職種もあります。新制度導入で、パートにも期末手当を支給する代わりに、時間給を引き下げるなどして効果を帳消しにしています。
公務員の非正規化は、相対的に賃金の低い女性への依存を前提に進展してきたとも言えます。家計の補助的に働く女性を雇用や人件費の調整弁とみなされています。高い専門性を要する基幹的業務も非正規が担っていますが、現状でも最低賃金に近い水準です。自治体が、財政の健全化と行政サービスの多様化という二律背反する役回りを迫られる中、そのしわ寄せは、新制度移行後も非正規の大半を占める女性らに向かっています。
(2021年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)