高齢者の運動能力の向上

スポーツ庁が毎年発表する新体力テストによれば、男女とも65歳以上の体力スコアは右肩上がりの傾向が顕著です。新型コロナウイルス禍の影響で2021年は落ち込みましたが、2022年の速報値は上昇に転じ、過去最高を記録した高齢世代も多くなっています。過去20年間で高齢者の男性は約5歳、女性は約10歳、体力的に若返っていると言えます。
病気や怪我などで自覚症状のある人の割合が減少しています。国民生活基礎調査によれば、65~74歳は腰痛や物忘れを訴える人の割合が年々低下しています。健康面のマイナスが減っているのは明らかです。通常歩行速度も速くなっています。通常歩行速度は将来に要介護になる度合いの判断材料にもなるほか、認知機能を反映している可能性もあります。
高齢者が体力的に若返っている理由としては、認知症や転倒の予防などシニア向けの健康情報が増え、ヘルスリテラシーが向上したことです。コロナ禍は運動不足に陥るマイナス面もあった一方、デジタル化で動画を見ながら自宅で気軽に運動ができる環境も整いました。65歳以上の高齢者の就労率上昇や社会活動などの増加、栄養状態の改善なども関与しています。
一方、新体力テストをみると、20歳以上の壮年・中年層の合計点は、横ばいや低下傾向が目立っています。特に40代女性は、この10年でほとんどの項目で低下しています。子育てや仕事で運動時間の確保が難しいためとみられます。新体力テストのアンケートで、運動の頻度も40代は男女とも週1日未満、30分未満の回答が最多となっています。

(2023年11月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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