人工臓器の研究開発

 糖尿病患者向けに、高機能な素材や微細な加工技術を生かして小型で使いやすい人工臓器を作る研究開発が進んでいます。慶應義塾大学などは血液をろ過してきれいにする人工腎臓を、東京医科歯科大学などはインスリンを出す人工膵臓の実用化に向け、それぞれ動物実験で効果を確かめています。人工透析など既存の治療の負担を軽くし、患者の生活の質を高めるのが目標です。糖尿病治療では、血糖値を測りながらインスリンを体内に入れる携帯型装置などが既に実用化されています。しかし、注入用の針を数日おきに交換するなどの手間がかかり、機械の装置を負担に感じる患者も多いとされます。
 糖尿病の患者は、高齢化や肥満などの影響で増え続けています。糖尿病が強く疑われる国内の患者は、2016年に推計1千万人に上っています。糖尿病は重症化すると腎臓の機能が下がり、人工透析に進みます。国内で人工透析を受ける患者は約30万人で、その医療費は年1兆円に及んでいます。素材や加工の技術の進歩によって、小型で使いやすい人工臓器が実現する可能性が出てきました。低コストで早期に実用化できれば、医療費の抑制にもつながると期待されます。

(2017年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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