子宮頸がんの9割以上はHPVの感染が原因です。感染してもほとんどはウイルスが検出されなくなりますが、まれに感染が持続し、数年かけてがん化します。200種類以上あるHPVの中で、がん化するものは少なくとも15種類あります。このうち16型は子宮頸がんの原因のおよそ半分を占め、16型と18型を合わせると60~70%を占めています。
日本では、定期接種の対象となる2価と4価、対象外の9価と、三つのワクチンが流通しています。それぞれ何種類の型の感染を防ぐかを表し、2価は16型、18型の感染を防ぎます。4価はこの二つのほか、良性のイボである尖圭コンジローマの原因となる6型、11型にも効果があります。
一方、9価は4価に加え、がん化の原因となる31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぎます。厚生労働省の資料などによると、9価は子宮頸がんの原因の80~90%をカバーします。米国では2014年12月に承認され、日本では2021年2月に販売が始まりましたが、自費接種のため、現在は3回接種で計10万円近くかかってしまいます。
ワクチンはHPV感染を防ぐ効果はありますが、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸がんを治したりする効果はありません。HPVは主に性交渉で感染するため、初めての性交渉の前にうつことが望ましく、定期接種の対象は小学6年~高校1年相当の女子となっています。
HPVワクチンをめぐっては、接種後に体の広い範囲が痛むなどの多様な症状が報告され、2013年6月に接種の積極的勧奨が中止されてしまいました。しかし、多様な症状と接種との関連は確認されないとして、厚生労働省は今年4月、勧奨を再開しました。勧奨が中止されていた期間に、定期接種対象だった1997~2005年度生まれの女性に公費接種を認めるキャッチアップ接種も4月に始まっています。来年4月から、9価ワクチンも定期接種の対象に含まれることになっています。
(2022年11月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)